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作品コラム

§今週の1点 vol.13 中川一政「マリア園眺望」1960年

§今週の1点 vol.13

 

中川一政「マリア園眺望(長崎)」

中川一政《マリア園眺望(長崎)》1960年

NAKAGAWA Kazumasa

《View of Maria-en , Nagasaki》1960

 

 全国の中川一政ファンのみなさま、こんにちは。いかがお過ごしですか。松任中川一政記念美術館では、感染症拡大防止のための休館期間中、公式ウェブサイトにおいて「§今週の1点」と題する作品紹介コーナーを連載しています。
 今回は、2021年10月1日から開幕予定の「没後30年 中川一政展-二つの中川一政美術館展交流展-」展示作品の中からご紹介してまいります。

 

◆中川一政「マリア園眺望(長崎)」1960(昭和35)年
カンヴァスに油絵具/53.0×72.7センチメートル

 

 青く広がる空のもと、赤レンガ造りの「マリア園」と、その向こうに望む入り江が左右に配されています。入り江に誘われるように画面世界を巡ると遥かに眺める丘や白い雲に出会います。本作は、中川一政67歳の作品です。
 
 一政は、戦後間もない1949(昭和24)年、56歳の時、神奈川県・真鶴町に画室を設け、そこを制作の拠点とします。やがて一政は、画室からほど近い福浦港(湯河原)周辺を題材に選び、その後およそ20年という年月をかけて、この風景と格闘し、独自の画境を切り拓いたことはよく知られていますが、その傍ら、彼はしばしば写生の旅を重ねています。
 1957年から1960年にかけては、しばしは長崎を訪れ、入り江や港の風景、マリア園や大浦天主堂を望む風景などを描いています。ときに平戸や桜島にも足を延ばしており、手元の『中川一政 油彩全作品集』(2007年 美術出版社)によれば、この間、九州方面の風景は55点確認でき、この地で腰を据えて取り組んだことが分かります。

 いわゆるホーム・福浦港での格闘を小休止し、旅先に身を置いて新たな制作を試みたのでしょう。描いては削りを繰り返した厚塗りの画面が多い福浦港の連作とは一線を画した印象です。本作をよく見れば、建物の窓などは一筆で勢いよく引かれ、画面全体も薄塗りで仕上げられており、筆の伸びやかな走りが伺えます。広い眺望を無理なく場面に写し込んだ、一政60代の優品の一つと言えます。

 本作を、展覧会「没後30年 中川一政展-二つの中川一政美術館展交流展-」(2021.10.1【開幕延期】11.28、松任中川一政記念美術館)で是非ご覧ください。

2021.9.10掲載 
ご案内:松任中川一政記念美術館 学芸員 徳井静華

 

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●松任中川一政記念美術館サイト-[作品コラム]

 

 

 

松任中川一政記念美術館の所蔵作品は、以下のサイトで見ることができます。
●白山ミュージアムポータルサイト_収蔵品検索のページ
http://www.hakusan-museum.jp/goods/goods_search.php
●文化遺産オンライン(文化庁)_松任中川一政記念美術館のページ http://bunka.nii.ac.jp/museums/detail/12616

 

 

 

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