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作品コラム

§今週の1点 vol.11 中川一政「山川呼応」1933年

§今週の1点 vol.11

 

中川一政「山川呼応」

 

中川一政《山川呼応》1933年[参考作品]

真鶴町立中川一政美術館蔵

NAKAGAWA Kazumasa

《Mountain and River in Harmony》1933

 

 全国の中川一政ファンのみなさま、こんにちは。いかがお過ごしですか。松任中川一政記念美術館では、感染症拡大防止のための休館期間中、公式ウェブサイトにおいて「§今週の1点」と題する作品紹介コーナーを連載しています。
 今回は、2021年9月から開幕予定の「没後30年 中川一政展-二つの中川一政美術館展交流展-」展示作品の中からご紹介してまいります。

 

◆中川一政「山川呼応」1933(昭和8)年
[参考作品]※/カンヴァスに油絵具/83.0×118.0センチメートル/真鶴町立中川一政美術館蔵

 

 秩父の山奥に逗留して描いたという本作は、一政40歳の作で、翌年1934年の春陽会第12回展に出品されています。この頃の、画家中川一政の中期にあたる作品は多くは残されておらず、その画業を辿る意味でも貴重な作品と言えます。

 山と川が呼応し響き合うというタイトルは、一政が表現したかったことを端的に示しています。

 

 「山川呼応」という意味は経絡のことである。当時、私は四面楚歌  の中にいたのではないかと思う。「つぼ」とか「経絡」とか考えている画かきはなかったろう。(中略)
 人物画であろうが風景画であろうが、生きていなければねらぬ。
手放しで歩き出さねばならぬ。動いていてもいい。静止していてもいい。とにかく、口にさわれば呼吸しており、手にさわれば脈をうっている。
 そういう画がかければよいと私は考えてきた。

 (中川一政「画の道 一」/『腹の虫』1975年 日本経済新聞社)

 

 画の中の一つ一つのモチーフは、孤立しているのではなく、古代中国の医学でいう「つぼ」が「経絡」(血気の通り道)によってつながっているように、それぞれが呼応し合い動き出すような画を描きたいのだという宣言でしょう。
 後に一政はこのことを端的に表す「ムーブマン」(仏:Mouvement)という言葉を得て、自作においては、美しさではなく「生きているかどうかを第一」とし、「ムーヴマンをとらえ、画面に定着させる」ことを目指すと書いています。(「写生道 一」『私は木偶である』1978年 車木工房出版部)ムーブマンは、主に絵画表現における動きや動勢のことをいい、モチーフの構成や配置によって、見るものの視線を誘導する手法のことです。一政は、生涯をかけてこの「ムーブマン」を、そして「生きた画」を追求していくこととなります。

 

※[参考作品]とは、中川一政が生前に自作の整理をした際、破棄しようとした作品の中に資料的価値を見出し、残すことにした作品であり、他の完成作品と区別することで展示公開を許したものです。これらの作品は、一政がいかに自らに厳しいものを課していたかを知るよすがでもあります。

 本作を、展覧会「没後30年 中川一政展-二つの中川一政美術館展交流展-」(2021.9.14【開幕延期】11.28、松任中川一政記念美術館)で是非ご覧ください。

2021.8.27掲載 
ご案内:松任中川一政記念美術館 学芸員 徳井静華

 

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●松任中川一政記念美術館サイト-[作品コラム]

 

 

 

松任中川一政記念美術館の所蔵作品は、以下のサイトで見ることができます。
●白山ミュージアムポータルサイト_収蔵品検索のページ
http://www.hakusan-museum.jp/goods/goods_search.php
●文化遺産オンライン(文化庁)_松任中川一政記念美術館のページ http://bunka.nii.ac.jp/museums/detail/12616

 

 

 

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