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作品コラム

§今週の1点 中川一政「マジョリカ壺の薔薇」1976年

§今週の1点 中川一政「マジョリカ壺の薔薇」

 

松任中川一政記念美術館本館ロビーに設置した

「あなたのお気に入りの1点」投票ボード

全国の中川一政ファンのみなさま、こんにちは。いかがお過ごしですか。

 

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、多くの美術館で開館時間の短縮や臨時休館の対応がとられ、当館も4月9日から休館しています。
2020特別企画 所蔵全作品公開展Ⅰ期「百花撩乱―薔薇作品を中心に―」(3月3日~5月31日)も、現在中断を余儀なくされていますが、3月下旬から4月上旬のわずかな開館期間中には、近くの小学生や、愛好者の方が来館くださり、思いおもいに作品との対話を楽しんでおられるようでした。
そんな方々に選んでいただいた「お気に入り作品」の中から〈今週の1点〉としてご紹介します。

 中川一政《マジョリカ壺の薔薇》1976年

NAKAGAWA Kazumasa《Roses in majolica Vase》1976

中川一政「マジョリカ壺の薔薇」1976年

カンヴァスに油彩/72.7×53.0センチメートル/[5票/50投票中]

 

先ず、薔薇に注目してみます。
大きくゆったりと巻いた花びらの一枚一枚が、勢いのあるタッチで一筆ずつしっかり描き込まれています。葉は、ラフに描かれ、元の形に捉われることなく勢いよく引いた輪郭線によって際立っています。

形が整っていることではなく「タッチが呼吸していること」、つまり「画が生きていること」を眼目とした中川一政の姿勢が表れています。

 

次に、視点を画面下に移すとタイトルにもある「マジョリカ壺」です。
16世紀頃、主にイタリアで焼かれたもので、一政の愛用の品の一つです。黄色と青が鮮やかで、何より中央に描かれた女性の顔が印象的な壺です。力強い薔薇とこの鮮やかな壺が拮抗し合い、絶妙のバランスがあります。

 

全体を見る前に、もう少し部分を見ていきましょう。
画面のほぼ中央にある大きな黄色の薔薇に目を向けると、上を向いた花弁やその横から伸びる茎に導かれるように右上の薔薇に視線がいきます。中央に戻ると、今度は真紅の薔薇が正面を捉え、その周りや奥にいくつもの薔薇が配されています。一方、一輪だけ下を向いた右下の花に目を移すと、ぽかりと空いた空間から、壺の女性にと視線が移りませんか。見るものの視線を次々に巡らせる動勢=「ムーヴマン」を感じます。

 

さて、最後に全体を見てみましょう。
壺と薔薇は画面の中央ではなく、少し左側に配されています。そこから画面右上に伸びた薔薇。そして、その対角線上の左下で、左側を見据える壺の女性。ここにも、絶妙のバランスがあります。

 

このように、一見不均衡にも感じる構図のなかにも、私たち見るものを画面世界に誘い、その中を巡る楽しみを与えてくる仕掛けがあるのかもしれません。

一政画伯83歳の時の作品です。

2020.4.14掲載 

ご案内:松任中川一政記念美術館 学芸員 徳井静華

       

 →2020 所蔵全作品公開展Ⅰ期「百花撩乱」チラシPDF

 →2020 所蔵全作品公開展Ⅰ期「百花撩乱」リストPDF

 

 

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