作品コラム
§今週の1点 vol.12 中川一政「マジョリカ壺」1950年頃
§今週の1点 vol.12
中川一政「マジョリカ壺」
中川一政《マジョリカ壺》1950年頃 真鶴町立中川一政美術館蔵 NAKAGAWA Kazumasa 《Majolica Vase》c.1950
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全国の中川一政ファンのみなさま、こんにちは。いかがお過ごしですか。松任中川一政記念美術館では、感染症拡大防止のための休館期間中、公式ウェブサイトにおいて「§今週の1点」と題する作品紹介コーナーを連載しています。
◆中川一政「マジョリカ壺」1950(昭和25)年頃
中川一政が薔薇や向日葵、椿などを描くとき、絶えず花と共に描かれるマジョリカ壺。本作は、マジョリカ壺と初めて出会い、その存在感に惹かれ壺単体で繰り返し描いた作品の一つです。
それから神戸へ行った時、丈七寸ばかりのマジョリカ壺を買った。これも古いものではなく、三千円くらいのものであって、騎士の顔が丸い輪郭の中にかいてある。これを何枚か描いた。
花や果物のように姿を変えることなく存在し続けるマジョリカ壺は、繰り返し挑み、自らの成長を確かめることができる題材として、飽かず描いたようです。
また、『油絵実習帖 第1巻』(1951年 アトリエ社)では、本作とは別の作品ですが同じ壺を題材にした作品を描く過程を、デッサン(第1図)からペイント(第2図)、ナイフで削って更にペイント(第3図)、そして完成(第4図)と順を追って一政自身が解説しています。そこから、1948(昭和23)年頃神戸でこの壺を手に入れたこと、その後1年位経ってから書きだし、5・6枚は描いていること、また、同時に2枚で競わせながら進めていくことなど、制作の様子が伺えます。
ただ壺というものはそこに立っているものだ、裸体人物が立っているのと少しもかわりがない。/その感じは描けなくてはいけないだろう。(中略)
幾度も描いては削りを繰り返したことを伺わせる分厚い絵具層からは、何とかして題材の存在や捉え、描き出そうとする気合いをひしひしと感じます。この気合を、展覧会場で実際の作品から感じてみてください。一政57歳頃の作品です。 本作を、展覧会「没後30年 中川一政展-二つの中川一政美術館展交流展-」(2021.9.14【開幕延期】–11.28、松任中川一政記念美術館)で是非ご覧ください。 2021.9.4掲載
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