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§今週の1点 中川一政「駒ヶ岳」1975年
§今週の1点
中川一政「駒ヶ岳」
中川一政《駒ヶ岳》1975年 NAKAGAWA Kazumasa 《Mt.Komagatake》
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全国の中川一政ファンのみなさま、こんにちは。いかがお過ごしですか。
◆中川一政「駒ヶ岳」1975(昭和50)年
隆起する稜線と、鮮やかな緑や茶色の山肌の濃淡で構成される箱根・駒ヶ岳。大人が両手をいっぱいに広げた程の幅の100号の大作です。滴るような緑の山が、まるで呼吸をし、脈を打つかのような躍動感をもって見るものに迫ってくるようです。
中川一政と言えば、「薔薇」や「向日葵」など花の絵を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。確かに、花を題材にした作品の数は油絵だけでも1,000点を超えており、油絵1,744点を収録する「中川一政油彩全作品集」(2007年、美術出版社)の中でも圧倒的な作品数です。 しかし、中川一政の画業の始まりは、身の周りの風景を描くことからスタートしています。20代(大正時代の初め)の頃、ひたむきに写生を繰り返すことでつかんだ手応えを頼りに、独学で画家の道を歩み出したのです。その後、1949(昭和24)年、50代半ばで神奈川県の真鶴半島にアトリエを設け、そこから程近い漁村「福浦」を連作することを通じて、豊かな色彩と力強い筆致により躍動感を湛えた独自の画風を確立します。その一政が70代半ばから新たな題材として選んだのが箱根の「駒ヶ岳」でした。
「ここなら何年も景色は変わるまい。何年も腰をすえてかかれる。自分にどれだけ力があるかためしたい。力というのは出してみないとわからない。」(中川一政「箱根・駒ヶ岳の記」 『日本経済新聞』1984年2月10日掲載)
生涯、現場で描くスタイルを貫いた一政が、自分の力を出し切ることができる真剣勝負の場を見つけ、大きな転機を迎えたときの覚悟が伺える言葉です。古希を越えてなお、自らに限界を定めることなく新たな対象に挑もうとする姿勢は、画家の描きたい、描かずにはいられないという最も純粋な思いの表れでしょう。 |
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松任中川一政記念美術館の所蔵作品は、以下のサイトで見ることができます。 ◎松任中川一政記念美術館ウェブサイト_トップページはこちら
2020.5.12掲載
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