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§今週の1点 vol.9 中川一政「酒倉」1914年

§今週の1点 vol.9

 

中川一政「酒倉」

 

中川一政《酒倉》1914年

真鶴町立中川一政美術館蔵

NAKAGAWA Kazumasa

《A Storehouse of Sake》1914

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 全国の中川一政ファンのみなさま、こんにちは。いかがお過ごしですか。松任中川一政記念美術館では、感染症拡大防止のための休館期間中、公式ウェブサイトにおいて「§今週の1点」と題する作品紹介コーナーを連載しています。
 今回は、2021年9月から開幕予定の「没後30年 中川一政展-二つの中川一政美術館展交流展-」展示作品の中からご紹介してまいります。

 

◆中川一政「酒倉」1914(大正3)年
板に油絵具/24.3×33.4センチメートル/真鶴町立中川一政美術館蔵

 

 ほの暗い画面をじっと眺めていると、倉の建物や空や地がみな大きな筆致で描かれていることに気が付きます。次第に、画面向かって右の空の明るさや、屋根に落ちた影、あるいは屋根の軒端に思い切って引かれた白い線によって、右斜め上空からの強い光を感じ始め、酒倉が存在感をもって立ち上がってくるのを感じます。画面左の屋根の上にあるサインの一部は「Aug ‘14」と読めることから、8月の晩夏の日射しが思われます。
 また、画面の左右の塗り残した部分にのぞく下地から、本作の大きな筆致を支えたのはカンヴァスではなく板であることが分かります。

 

 本作は、中川一政の処女作に位置づけられる作品であり、1914年、一政21歳の時のものです。

 当時の一政は、自分の生きる道を模索するなか、約1年間を神戸・芦屋で過ごします。そこで、外国航路船に乗る知人から英国・ウィンザー&ニュートン製の油絵具一式を贈られたことを機に描いたのが本作です。旧題は「摂津深江」といい、滞在先の芦屋からほど近い深江の酒倉を描いたことが分かります。

 その後、東京へ戻った一政によって本作は「巽画会第14回美術展覧会」(1914年、上野公園竹之台陳列館)に出品されます。その年、巽画会に新設されたばかりの洋画部の審査員をつとめたのが岸田劉生(1891-1929)でした。一政の「酒倉」は、劉生の目に留まり、処女作で初出品ながら入選を果たします。このことにより一政は、大きな影響を受ける劉生との出会いを迎えることとなるのです。
 
 本作を、是非展覧会「没後30年 中川一政展-二つの中川一政美術館展交流展-」(2021.9.4-11.28、松任中川一政記念美術館)でご覧ください。

2021.8.14掲載 
ご案内:松任中川一政記念美術館 学芸員 徳井静華

 

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●松任中川一政記念美術館サイト-[主な収蔵品]-[作品コラム]

 

 

 

松任中川一政記念美術館の所蔵作品は、以下のサイトで見ることができます。
●白山ミュージアムポータルサイト_収蔵品検索のページ
http://www.hakusan-museum.jp/goods/goods_search.php
●文化遺産オンライン(文化庁)_松任中川一政記念美術館のページ http://bunka.nii.ac.jp/museums/detail/12616

 

 

 

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