Loading

白山ミュージアムポータルサイト

お知らせ

§今週の1点 vol.7 中川一政「鉄線花」1981年

§今週の1点 vol.7

 

中川一政「鉄線花」

 

中川一政《鉄線花》1981年

NAKAGAWA Kazumasa

《Clematises》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全国の中川一政ファンのみなさま、こんにちは。いかがお過ごしですか。
「§今週の1点」では、「百花撩乱-薔薇作品を中心-」前期展(2021年3月6日~5月13日)に来館された方々が選んだ「お気に入りの1点」の中からご紹介しています。

 

◆中川一政「鉄線花」1981(昭和56)年
紙に岩絵具/51.0×55.0センチメートル/[14票/293投票中]

 

ほんのりと赤みを帯びた白い鉄線花が、愛用の小さな壺に生けられています。画面左にすっと伸びた花と壺に描かれた人物の語らいが聞こえてきそうですが、全体にゆったりと取られた余白の中に静かな佇まいが感じられます。

 

 ”鉄線花を子供の時に見た覚えはない。少なくとも私の世界にはなかった。ずっと大人になって妙高高原の小杉放菴の邸の裏庭に、信越の山を見おろして凛呼として咲いていた。濃い群青の花であった。
 それから一、二度、描くようになった。花屋で買ってくると竹に蔓がしがみついている。ことし、庭に植えたばかりで紫のはまだ咲かない。白いほうがゆったり咲いた。それを切ってマジョリカ壺にさして描いた。
 マジョリカ壺には使徒が描いてある。きよらかなこの花にうつるようである。”
(中川一政「鉄線花」『うちには猛犬がゐる』(1963年、筑摩書房)

 

初めて鉄線を見たときのことや、自ら生けて描いてみたときの思い出がつづられたエッセイからは、一政がこの花の凛とした清らかさに心動かされたことが伺えます。茶色の背景に、灰色に着色されたマットという押さえられた色調のなかに、白い花が浮かび上がるように描かれた本作も、花が持つ浄げなる魅力を見事に描き出しています。

 

《薔薇》や《向日葵》など油彩作品と趣を異にする本作は、岩絵具(いわえのぐ)で描かれており、中川一政はこれらを「岩彩(がんさい)」と呼んでいます。岩絵具は、主に鉱石を砕いてつくられる粒子状の絵具で、それ自体では画面に定着しないのため、膠(にかわ)液と混ぜて使います。

 

 ”私の机の横には、いつも炭火にお湯がたぎってゐる。夏下冬上の理法によって、炭火をたやさない。これは茶をいれる用意のためばかりではなく、膠を煮て、絵具を溶く必要でもある。”

(「茶と酒」『うちには猛犬がゐる』前掲)

 

本作以外にも、鉄線を主題にした作品は7点ほど確認できますが、いずれも岩絵具で描かれています。どの作品も、1ないし2輪のみが楚々と生けられ、ときにビワやリンゴなどとの取り合わせが試みられています。
本作は、1981(昭和56)年、中川一政88歳の制作です。

 

2021.6.5掲載 
ご案内:松任中川一政記念美術館 学芸員 徳井静華

 

§今週の1点 バックナンバーはこちらから 

●松任中川一政記念美術館サイト-[主な収蔵品]-[作品コラム]

 

 

 

松任中川一政記念美術館の所蔵作品は、以下のサイトで見ることができます。
●白山ミュージアムポータルサイト_収蔵品検索のページ
http://www.hakusan-museum.jp/goods/goods_search.php
●文化遺産オンライン(文化庁)_松任中川一政記念美術館のページ http://bunka.nii.ac.jp/museums/detail/12616

 

 

 

ページTOPへ