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§今週の1点 vol.6 中川一政「薔薇」1982年

§今週の1点 vol.6

 

中川一政「薔薇」

 

中川一政《薔薇》1982年

NAKAGAWA Kazumasa

《Roses》

 

 

 

中川一政コレクション

《マジョリカ陶器 色絵人物図壺》17世紀 イタリア

NAKAGAWA Kazumasa’s Collection

《Majolica,Vase》17th century

 

 

 

 

 

全国の中川一政ファンのみなさま、こんにちは。いかがお過ごしですか。
石川県の「石川緊急事態宣言」発出に伴い、当館は5月14日(金)から6月14日(月)まで休館していますが、ご要望にお応えして、昨年2020年の休館期間中にこのサイトで連載した「§今週の1点」を再開いたします。
今回は「百花撩乱-薔薇作品を中心-」前期展(2021年3月6日~5月13日)に来館された方々が選んだ「お気に入りの1点」の中からのご紹介です。

 

◆中川一政「薔薇」1982(昭和57)年
カンヴァスに油彩/65.1×53.0センチメートル/[30票/293投票中]

 

色とりどりの薔薇を愛用のマジョリカ壺に生けたモチーフで、画面の大きさは約65×53センチメートルの15号と呼ばれるサイズです。通常20号(約73×61センチメートル)から50号(約117×91センチメートル)の作品を展示することが多い当館の展示室1の中では少し小さめですが、それでも多くの方の眼と心を捉えているのは、装飾性の高い額縁のためだけではありません。

 

画面を見てみましょう。明るい背景色と大ぶりな壺に、ゆったりと巻いた薔薇の花びらの色彩が映え、全体として大きなまとまりを見せる構図です。最初にみなさんの眼に入ってきたのは何でしょうか。画面の真ん中から見ていくと、中央の赤の線で描かれた薔薇、壺の騎士の顔、下を向いた大輪の白薔薇を巡った視線が次にむかうのは、中央で天を見上げるようなピンクの薔薇かもしれません。左の首をかしげるような黄色い薔薇、その対をなすかのように右に配された薔薇も雄弁です。中央の赤い薔薇たちに戻り、幾度か花から花を巡ると、それぞれの花びらが面と線を取り混ぜて動きのあるタッチで描かれ、一つとして同じ表現がないことにも気付かされます。本作の制作は、薔薇を描き始めてから20年余りを経た時期にあたりますが、こうしたところにも、常に生きた画を求めて、一つの到達点に留まらず、新たな表現を模索し続ける姿勢を見ることができます。

 

そして、一歩引いて全体を見渡すと、それぞれの花の向きや騎士の視線が、画面の外へ向かっていることにも気が付きます。画面の枠を越えて、左右や上下、また画面の前にいる私たちに向かって伸びるベクトルをもって構成されているようです。このベクトルが、15号の本作にリズミカルな躍動を与え、堂々とした存在感を感じさせるのかもしれません。

 

本作は、1982(昭和57)年、中川一政89歳の制作です。
この年一政は、1月、2月に個展を開催し、5月にアメリカを、10月には中国を訪問するなど精力的に活動しています。また、6月には新しいアトリエを完成させるなど、90歳を前に、今後の制作活動を見据える姿が伺えます。一政は90代にも数多くの〈薔薇〉作品を生み出しており、当館では1962年69歳から1990年97歳までに描かれた薔薇作品55点を収蔵しています。今後も様々な企画で紹介してまいりますので、どうぞご覧ください。

2021.5.26掲載 
ご案内:松任中川一政記念美術館 学芸員 徳井静華

 

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●松任中川一政記念美術館サイト-[主な収蔵品]-[作品コラム]

 

 

 

松任中川一政記念美術館の所蔵作品は、以下のサイトで見ることができます。
●白山ミュージアムポータルサイト_収蔵品検索のページ
http://www.hakusan-museum.jp/goods/goods_search.php
●文化遺産オンライン(文化庁)_松任中川一政記念美術館のページ http://bunka.nii.ac.jp/museums/detail/12616

 

 

 

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