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§今週の1点 vol.6 中川一政「薔薇」1982年
§今週の1点 vol.6
中川一政「薔薇」
中川一政《薔薇》1982年 NAKAGAWA Kazumasa 《Roses》
中川一政コレクション 《マジョリカ陶器 色絵人物図壺》17世紀 イタリア NAKAGAWA Kazumasa’s Collection 《Majolica,Vase》17th century
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全国の中川一政ファンのみなさま、こんにちは。いかがお過ごしですか。
◆中川一政「薔薇」1982(昭和57)年
色とりどりの薔薇を愛用のマジョリカ壺に生けたモチーフで、画面の大きさは約65×53センチメートルの15号と呼ばれるサイズです。通常20号(約73×61センチメートル)から50号(約117×91センチメートル)の作品を展示することが多い当館の展示室1の中では少し小さめですが、それでも多くの方の眼と心を捉えているのは、装飾性の高い額縁のためだけではありません。
画面を見てみましょう。明るい背景色と大ぶりな壺に、ゆったりと巻いた薔薇の花びらの色彩が映え、全体として大きなまとまりを見せる構図です。最初にみなさんの眼に入ってきたのは何でしょうか。画面の真ん中から見ていくと、中央の赤の線で描かれた薔薇、壺の騎士の顔、下を向いた大輪の白薔薇を巡った視線が次にむかうのは、中央で天を見上げるようなピンクの薔薇かもしれません。左の首をかしげるような黄色い薔薇、その対をなすかのように右に配された薔薇も雄弁です。中央の赤い薔薇たちに戻り、幾度か花から花を巡ると、それぞれの花びらが面と線を取り混ぜて動きのあるタッチで描かれ、一つとして同じ表現がないことにも気付かされます。本作の制作は、薔薇を描き始めてから20年余りを経た時期にあたりますが、こうしたところにも、常に生きた画を求めて、一つの到達点に留まらず、新たな表現を模索し続ける姿勢を見ることができます。
そして、一歩引いて全体を見渡すと、それぞれの花の向きや騎士の視線が、画面の外へ向かっていることにも気が付きます。画面の枠を越えて、左右や上下、また画面の前にいる私たちに向かって伸びるベクトルをもって構成されているようです。このベクトルが、15号の本作にリズミカルな躍動を与え、堂々とした存在感を感じさせるのかもしれません。
本作は、1982(昭和57)年、中川一政89歳の制作です。 2021.5.26掲載
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