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§今週の1点 vol.8 中川一政「チューリップ」1981年

§今週の1点 vol.8

 

中川一政「チューリップ」

 

中川一政《チューリップ》1981年

NAKAGAWA Kazumasa

《Tulips》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全国の中川一政ファンのみなさま、こんにちは。いかがお過ごしですか。
「§今週の1点」では、「百花撩乱-薔薇作品を中心-」前期展(2021年3月6日~5月13日)に来館された方々が選んだ「お気に入りの1点」の中からご紹介しています。

 

◆中川一政「チューリップ」1981(昭和56)年
紙に岩絵具/58.0×50.5センチメートル/[18票/293投票中]

 

一見して色彩の美しさに目を奪われる作品です。
6輪の瑞々しいチューリップが、背景の鮮やかな青と響き合いながら浮かび上がってきます。
最初に目に入るのは、中央の黄色と赤のチューリップです。この2輪は、こちらを見るように開いて私たちを画面世界へいざないます。上に伸びる茎に従って目線を進めると、次の2輪に出会います。こちらはさりげなく白と黒の対比になっており、黒いチューリップは青の空間に溶け込んでゆき視線を次に送ります。右に目を移すと、白いチューリップが茎で繋がれるように2輪、縦に配置されています。この縦のラインを辿っていくと、チューリップを支えるマジョリカ壺、そしてそこに描かれる2人の人物に気付かされます。2人は互いに手を伸ばして向き合い、画面の横(左右)の動きを示唆するようです。改めて作品を見ると、これまで2輪ずつに感じていたリズムが、左右3輪ずつのリズムになることに気付きます。新たな発見とともに何度も画面に目を巡らせる仕掛け、画面上の流れやリズムを大切にした中川一政の試みが、この作品にも隠れています。

 

中川一政がチューリップを自身の画題として取り上げたのは、確認できる限り1924(大正13)年31歳の油彩《チューリップ》まで遡ることができます。その後も晩年まで油彩や岩彩の題材として度々登場するチューリップは、一政にとってどんな花だったのでしょうか。それが垣間見られる文章を紹介します。

 

チューリップは長い茎で花を捧げている。茎は人間が腕をのばしている工合だから草臥れる。
元気なチューリップをかいていて、翌日描きつづけようとしてびっくりしたことがある。あられもない姿をしてねそべっていた。
「同じポーズをしているのはつらいのよ。」
とこのモデルは云うのである。
(中川一政「春夏秋冬」『中川一政全文集第10巻』中央公論社)

 

この文章から、一政がチューリップをユーモラスな花、人間味や面白味のある花と感じていたことが推察されます。
本作《チューリップ》(1981(昭和56)年)には、88歳の一政が感じたチューリップの魅力が詰まっているのではないでしょうか。

 

2021.6.12掲載 
ご案内:松任中川一政記念美術館 学芸員 福田朱

 

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●松任中川一政記念美術館サイト-[主な収蔵品]-[作品コラム]

 

 

 

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●白山ミュージアムポータルサイト_収蔵品検索のページ
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●文化遺産オンライン(文化庁)_松任中川一政記念美術館のページ http://bunka.nii.ac.jp/museums/detail/12616

 

 

 

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