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§今週の1点 vol.14 中川一政「カーニュの坂道」1962年

§今週の1点 vol.14

 

中川一政「カーニュの坂道」

 

中川一政《カーニュの坂道》1962年

NAKAGAWA Kazumasa

《A Slope in Cagnes》1962

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 全国の中川一政ファンのみなさま、こんにちは。いかがお過ごしですか。松任中川一政記念美術館では、感染症拡大防止のための休館期間中、公式ウェブサイトにおいて「§今週の1点」と題する作品紹介コーナーを連載しています。
 今回は、2021年10月1日から開幕予定の「没後30年 中川一政展-二つの中川一政美術館展交流展-」展示作品の中からご紹介してまいります。

 

◆中川一政「カーニュの坂道」1962(昭和37)年
カンヴァスに油絵具/65.3×53.2センチメートル/真鶴町立中川一政美術館蔵

 

 中川一政が初めてヨーロッパを訪れたのは1953(昭和28)年、60歳のことです。その後も機会を捉えて渡欧し、史跡や美術館などを巡り古今の芸術に触れる「ぶつかり稽古」をし、時に滞在地での写生も試みています。
 本作は、バイエルン独日協会の招きによる2度目の渡欧の折、南仏のカーニュ・シュル・メール(Cagnes-sur-Mer)で描いた作品で、旧題は「カーニュの丘」とあります。画面中ほどの赤く点灯した信号機を「へそ」にして、画面は右上から左下へ斜めに分けられ、右下の広場には車や犬を連れた女性が配され、左には坂があります。坂道を上へ辿ると、その脇の家並みや樹木、そして青い空に視線が誘われます。強い配色は、南仏の陽射しを感じさせます。

 

 明方雷が鳴ったが、雨はカーニュの丘を少しぬらしたばかりだ。
毎日雲もなく晴れている。質素なホテルに落ち着いている。鎧戸をひらいた南の窓の底に樹木に囲まれた赤い屋根が見え、かすかに海が見える。細長く限られた空に線をひいて燕がとび交う。横に斜めにしきりにとび交う。
 ホテルを出て二、三分石段を上ると古城の広場があって、景色の見晴らし場になっており、さいかちの樹の陰にレストランがあり、近所の画家たちが腰かけている。ロシア人もいるそうである。
 ここから見渡す丘にルノアールの家があり、下の方にはモジリアニのいた家があり、日本の留学画家で、ここに来なかった人はまずいないであろう。彼もいた。彼も来たと云う。亡き人も多い。実際、つわものどもが夢の跡である。
 丘をおりるとニースへ行く街道がある。それに沿ったアトランチックの海は、カンヌ、サン・ラファエルまでつづく海水浴場である。自動車の間を裸の男女が通り抜ける・・・(後略)
(中川一政「カーニュ(一)」『うちには猛犬がいる』1963年/筑摩書房)

 

 エッセイと共に味わうと旅の情趣も感じられます。この地での油彩作品は4点確認できますが、何れもカンヴァスを縦にして描かれています。丘へ続く坂道や街の人々、またかついた画家たちを想い、揺り動かされた一政の心情が伸びやかに写されています。

 

 本作を、展覧会「没後30年 中川一政展-二つの中川一政美術館展交流展-」(2021.10.1【開幕延期】11.28、松任中川一政記念美術館)で是非ご覧ください。

2021.9.17掲載 
ご案内:松任中川一政記念美術館 学芸員 徳井静華

 

§今週の1点 バックナンバーはこちらから 

●松任中川一政記念美術館サイト-[主な収蔵品]-[作品コラム]

 

 

 

松任中川一政記念美術館の所蔵作品は、以下のサイトで見ることができます。
●白山ミュージアムポータルサイト_収蔵品検索のページ
http://www.hakusan-museum.jp/goods/goods_search.php
●文化遺産オンライン(文化庁)_松任中川一政記念美術館のページ http://bunka.nii.ac.jp/museums/detail/12616

 

 

 

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