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§今週の1点 vol.12 中川一政「マジョリカ壺」1950年頃

§今週の1点 vol.12

 

中川一政「マジョリカ壺」

 

 

 

中川一政《マジョリカ壺》1950年頃

真鶴町立中川一政美術館蔵

NAKAGAWA Kazumasa

《Majolica Vase》c.1950

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 全国の中川一政ファンのみなさま、こんにちは。いかがお過ごしですか。松任中川一政記念美術館では、感染症拡大防止のための休館期間中、公式ウェブサイトにおいて「§今週の1点」と題する作品紹介コーナーを連載しています。
 今回は、2021年9月から開幕予定の「没後30年 中川一政展-二つの中川一政美術館展交流展-」展示作品の中からご紹介してまいります。

 

◆中川一政「マジョリカ壺」1950(昭和25)年頃
カンヴァスに油絵具/33.3×24.2センチメートル/真鶴町立中川一政美術館蔵

 

 中川一政が薔薇や向日葵、椿などを描くとき、絶えず花と共に描かれるマジョリカ壺。本作は、マジョリカ壺と初めて出会い、その存在感に惹かれ壺単体で繰り返し描いた作品の一つです。

 

 それから神戸へ行った時、丈七寸ばかりのマジョリカ壺を買った。これも古いものではなく、三千円くらいのものであって、騎士の顔が丸い輪郭の中にかいてある。これを何枚か描いた。
壺や花びんは林檎のように腐らない。描きたい時に描きたいだけ描き、又、思い出して描き、いつでもかける。カンバスの裏をひっくりかえして見ると、五年も前から手がけているのもある。画面を削り削りかくのだが、厚くもり上がってひどく凸凹している。
 前の作品とくらべて、自分の力量をためすことができる。一枚仕上げると、又、次のをかき出している。飽きないのだから仕方がない。飽きたらよそうと思う。新鮮な気持で向えなくなったらよすだろう。中川一政「陶器について」『うちには猛犬がいる』(1956年 筑摩書房)より)

 

 花や果物のように姿を変えることなく存在し続けるマジョリカ壺は、繰り返し挑み、自らの成長を確かめることができる題材として、飽かず描いたようです。

 

 また、『油絵実習帖 第1巻』(1951年 アトリエ社)では、本作とは別の作品ですが同じ壺を題材にした作品を描く過程を、デッサン(第1図)からペイント(第2図)、ナイフで削って更にペイント(第3図)、そして完成(第4図)と順を追って一政自身が解説しています。そこから、1948(昭和23)年頃神戸でこの壺を手に入れたこと、その後1年位経ってから書きだし、5・6枚は描いていること、また、同時に2枚で競わせながら進めていくことなど、制作の様子が伺えます。

 ただ壺というものはそこに立っているものだ、裸体人物が立っているのと少しもかわりがない。/その感じは描けなくてはいけないだろう。(中略)
 一部分よく出来たと思ってそこを大事にして全体がいじける時がある。そういう時は思いきって削った上で描き起こしていく。全体の気合が大切だと思う。中川一政『油絵実習帖 第1巻』(前述)より)

 

 幾度も描いては削りを繰り返したことを伺わせる分厚い絵具層からは、何とかして題材の存在や捉え、描き出そうとする気合いをひしひしと感じます。この気合を、展覧会場で実際の作品から感じてみてください。一政57歳頃の作品です。

 本作を、展覧会「没後30年 中川一政展-二つの中川一政美術館展交流展-」(2021.9.14【開幕延期】11.28、松任中川一政記念美術館)で是非ご覧ください。

2021.9.4掲載 
ご案内:松任中川一政記念美術館 学芸員 徳井静華

 

§今週の1点 バックナンバーはこちらから 

●松任中川一政記念美術館サイト-[主な収蔵品]-[作品コラム]

 

 

 

松任中川一政記念美術館の所蔵作品は、以下のサイトで見ることができます。
●白山ミュージアムポータルサイト_収蔵品検索のページ
http://www.hakusan-museum.jp/goods/goods_search.php
●文化遺産オンライン(文化庁)_松任中川一政記念美術館のページ http://bunka.nii.ac.jp/museums/detail/12616

 

 

 

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